新制度(総合型DB)の課題を解説します。
先週からスタートした説明会で新制度(総合型DB*)の説明資料が提示されました。
【DB:確定給付企業年金】
そこで、新制度(総合型DB)の内容と課題を解説(青字表記)いたします。
■総合型DBの内容■
①掛金(全額事業主負担)について:-標準報酬給与月額に対する掛金率-
-標準掛金 12‰ (1.2%)
-特別掛金 31‰ (3.1%)・・・償却期間10年3ヶ月
-事務費等 2‰ (0.2%)
合 計 45‰ (4.5%)
掛金率は、‰;パーミル(千分率)と、%;パーセント(百分率)の両方で記載します。ご注意ください。
※掛金に関する最大の課題は、特別掛金の負担です。
特別掛金とは、過去に発生した積立不足分を穴埋めするために負担するものです。
特別に掛金を増やせば将来の年金が特別に増える、というものではありません。
年金分野では、過去に発生した積立不足を”過去勤務債務”と呼び、積立不足分を
”穴埋め”することを、過去勤務債務を”償却”すると言います。
償却期間10年3ヶ月とは、この特別掛金の負担が10年3ヶ月続くことを意味します。
平たく言えば、新制度に加入する企業には、3.1%の別途負担が全加入員対象に
10年3ヶ月続くということです。新入社員でもこの追加コストが生じます。
そして、この追加負担は加入員本人の将来給付分には反映されません。
給付とのバランスは後で解説します。
②給付について(一時金・年金):
<加入員>
●一時金;加入期間1カ月以上、10年未満の場合、脱退一時金を退職時に支給。
●年金;加入期間10年以上で、60歳退職または65歳到達の場合、退職時一時金、
または確定年金支給(給付期間は有期;5・10・15・20年から選択)。
●給付額算定方式;加入期間中の平均標準給与月額×支給率(加入期間別)
一時金ベースでは、従来の基金一時金額と同等水準。
過去の加入員期間は引き継がれる。(加入期間は基金加入時から計算)
●予定利率・年金換算率・繰下げ利率、2.0% (現行基金の5.5%から変更)
※新制度の給付水準は、一時金ベースでは厚年基金と同じになります。
年金(一時金額の分割受取)ベースは、年金換算率が現行基金の5.5%から
2.0%に下がるので、年金額は減額になります。また給付期間は最長20年に
なるので(現行基金では”終身給付”=60歳の平均余命期間・23年が平均的
給付期間)給付期間も短縮され、年金支給総額は現行基金よりも減ります。
(詳しくは後述)
加入期間による支給条件を、一時金は加入期間1カ月から(従来は3年)、
年金は加入期間10年以上(従来は15年)としたのは現行より改善です。
なお、”予定利率2.0%”とは、新制度での資産運用利回りの基準(前提)が
年利2.0%ということです。運用機関の手数料で0.3-0.4%が取られるので、
実際の運用利回りは2.3%-2.4%が必要です。
<受給権者> (基金の受給者・待期者で、出身事業所が新制度に加入)
●加算年金額は、従来額から30%減額。
●支給期間は終身給付を維持。
これに同意する場合は、新制度に権利義務を移転(新制度から年金給付)。
そうでない場合は、解散後の分配金支払いで清算終了。
※受給権者(受給者および受給待期者;年金受給権は持っているがまだ受給
開始していない方、を総称して”受給権者”と呼びます)は、年金額は減額して、
終身給付は維持、つまり「給付減額」になります。
それでも、解散後分配金(一時金)よりは支給総額は大きくなるので、殆どの
受給権者は新制度に移行するでしょう。
ここで問題になるのは、新制度に移行する企業の受給権者(OB)は移行出来て
(条件変更に同意すれば)、それ以外の受給権者、新制度に移行しない企業の
受給権者(OB)、あるいは出身企業が過去に脱退、または廃業・倒産などで
消滅して基金には残っていない、いわゆる親なし受給権者は、そもそも移行する
選択権がない、ということになります。
これは、基金運営上の原則である加入員(受給権者は過去の加入員)に対する
”公平性”の観点から問題含みです。
受給権者の年金受給権は、出身企業との権利義務関係ではなく、基金自体との
権利義務関係ですので(年金支給義務は出身企業から基金に移っている)、
同じ権利を有する受給権者でも、その出身母体の理由で権利行使を差別する
ことには問題が残ります。(移行できない受給権者から基金が訴えられるリスク)
掛金額と給付額のバランス、具体的な数字計算は次の投稿で解説します。
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